下りのスループットとMax Traffic Burstの関係

 上りのスループットと、Max Traffic Burst、Max Concatenated Burstとの関連性については、これまでのエントリーでも書いてきましたが、下りに関してはあまり詳しく書いたことがありませんでした。
 そこで、今回は下りのスループットとMax Traffic Burstとの関連性について考えてみたいと思います。


Max Traffic Burstは、トラフィックを集中的に送信する際のバッファ量である
 遅延が大きなネットワークにおいては、ある程度のバッファを設けることで、効率的に大量のトラフィックを送受信することができるようになります。
 一般的には遅延が大きければ大きいほど、バッファのサイズも大きくすることで効率性が高くなりますが、逆に、バッファサイズを大きくし過ぎると、遅延が大きくなってスループットが思うように伸びません。
 では、DOCSISの下り方向のネットワークでは、どれくらいのバッファサイズが最適なのでしょうか。


下りのQoS設定によって最適なMax Traffic Burst値は異なる
 DOCSIS RFIでは、1522Bytes(Ethernetフレームに、22BytesのVLANヘッダを加えた数字)の倍に当たる3044Bytesが、Max Traffic Burstの最小設定値として規定されています。
 この値では、どれくらいのスループットに対応できるか、単純に計算してみましょう。
 下り通信で発生する遅延を考慮してみると・・・

  • QAM変調による固定遅延:256QAMの場合、1.5msの遅延
  • Interleaver設定による固定遅延:Tapを8とした場合、256QAMで4.1usecのガードタイムと、150usecの遅延

 従って、下り方向の通信には、1回のBurst通信は最短で1154.1usec毎に行われることになります。
 このことから、1秒間でのBurst通信回数は以下のようになります。

  • 1sec = 1,000,000usec÷1154.1 ≒ 866回

 Max Traffic Burst値を3044Byteとした場合、866 × 3044Byte = 2,636,104Bytes、つまり、約21Mbpsが上限値となります。
 ということは、DOCSISのオーバーヘッドを考慮しても、下りのQoSが20Mbps以下の場合には、下りのMax Traffic Burst値は3044Byteで十分なわけです。


 では、下りのQoSを40Mbpsとしている場合には、いくつにするのが最適なのでしょうか。
 単純に計算すると・・・

  • 40Mbps = 5,000,000Bytes/sec
  • 5,000,000Bytes ÷ 866 ≒ 5773Byte

 となり、理論上は5773Byteに設定すれば、CMTSからCMへの、下り方向のスループットに対しては40Mbpsの通信を担保できるようになります。
 実際には、Ethernetフレームサイズの倍数で設定することが望ましいとされているので、1522Bytesの4倍である、6088Bytesに設定することで、下り40Mbpsのスループットに対応できることとなりますね。


DOCSIS3.0モデムの場合も、考え方は同じ
 160Mbpsのサービス展開に使用されている、DOCSIS3.0モデムの場合にも、同じ計算で最適な数値を算出することが可能です。
 試しに、計算してみましょう。

  • 160Mbps = 20,000,000Bytes/sec
  • 20,000,000Bytes ÷ 866 ≒ 23,095Bytes ≒ 24,352Bytes(Ethernetフレーム16個分)


 ということで、下りの通信速度を160Mbpsに設定してサービスを展開する場合には、下りのMax Traffic Burst値を最低でも24,352Bytesに設定しておかなければならないことが分かります。


 以上、参考になったでしょうか。
 念のため付け加えておくと、各社のDOCSISモデムでは、内部のソフトウェア処理やハードウェア処理においてさらに遅延が加わる可能性がありますので、設定値については念のため各社にご確認いただくことをおすすめします。


ではでは!