S-CDMAによるPower Managementについて

どうやら、Power Management機能がDOCSIS2.0のRFIに盛り込まれることが決定した模様。
これに伴って、T社の同機能の名称が「dB booster」となった。
うちの社内でもここを見ている人が増えてきたみたいなので、この機能についての概要を記しておこう。

1. S-CDMAの特徴
TDMAは、デジタル信号にQAM値を掛け合わせた後、エラー訂正を加えて信号幅を広くした信号波で、1波あたり1ユーザーのデータしか伝送できないが、S-CDMAはQAM値を掛け合わせた後、さらにアナログ波を掛け合わせ(これを拡散変調と言うらしい)て縦に長い信号波を横に長い信号波に変換する。1データ当りのレベルが低くなった分、多くのデータを重ねる事が出来るようになり、現在DOCSIS2.0で規定されているスペックでは、最大128コード(128データ)を多重することが出来る。このとき、信号レベルを1/128に変換し、横の幅を128倍するため、1コードしか伝送していないモデム(Pingとかを打ち続けると簡単)の上り波形は、うすべったいノイズのようなものになる。
1モデムあたり、何コード使用できるようにするかは、CMTSが決定する。通常はModulation-Profileの中で指定するが、中には上りポート毎に指定できるCMTSもあるらしい。
仮に、1モデム当りのコード使用制限を4コードとすると、128コード/4コードで、最大32台のモデムが1波を共有できる計算になる。

2. Power management(以下、PM)の概要
PM機能を実現するためには、DAC(Digital Analog Converter)にてS-CDMAのコードをデジタル的に伸張させる必要がある。つまり、対応していないDACを積んだケーブルモデムでは、S-CDMAに対応していても、PM機能には対応できないので要注意。
さて、S-CDMAでは、拡散する際にレベルを従来の1/128にするが、このレベルを1/64とか、1/32とかにしてやれば、1コード当りの電力は高くなる、つまり、1コード当りの耐SNR性能も良くなる。また、電力値を上げたコードは、CMTSで復調する際にも高く取り出す事が出来るので、実際にモデムがS-CDMAの上限値である53dBmVを出力しきっていたとしても、CMTSへの到達レベルを設定値通りに保つ事ができる。CATV局での運用では、SNRの確保よりも、到達レベルを確保できることの方が重要だ。
では、実際にはどのような動作になるのか? PM機能は次の数式で電力値を求める事が出来る。
Ps=√128/Nc
Ps : 電力伸張率
Nc : 1モデム当りのコード数
たとえば、1モデム当り32コードを使用していたとすると、PM機能なしではPs/128*32 の電力値しかないが、PM機能を用いる事で、√128/32 = √4 = 2 つまり、1コード当りの電力値を2倍=6dBに伸張する事が出来るようになる。
実際に系統図を書いて計算すれば分かりやすいので、お試しを。