CMTSの上り信号レベル設定

なんと、2年10ヶ月ぶりの更新です。
すみませんすみません。

さて、今回はCMTSの上りレベル設定の基本についてです。
伝送路というのはCATV局ごとにポリシーも運用ノウハウも異なりますので、一概にこの方法ですべてOKとはいかないのですが、もしCMTSの運用で上りレベル設定方法に迷った場合は、この基本に立ち返って考えると、シンプルに考えられるのではないでしょうか。


「はじめに」
よくある誤解なのですが、CMTSの上り受信レベルを変更しても、加入者モデムの上りSNRを良くすることはできません。
見かけ上、SNRが良くなるように見えますが、E/O・O/E(光送受信機)への入力値がその分上昇しますので、上り信号のサチュレーションが発生し、かえってパケットロスや通信品質が低下する恐れが出てきます。
本来は、伝送路〜光送受信機〜CMTSまでの、全体のRF配線の中で調整した結果としてCMTSの上りチャネルへ到達した信号レベルを、CMTSに設定するのが正しい姿です。
つまるところ、H/E内配線の結果としてCMTS側でのレベル設定があるものですので、そのためには以下の内容を順番に確認しなければなりません。
 
1. 確保したいSNR値をいくつにするかを決める。
 CATV局にて、モデムの上りSNR値をいくつで運用したいと考えているのかを、まずは決めていただかなければなりません。
 これは伝送路の状態や設備の経過年数によっても変わってきますが、HFC化が済んでいる伝送路では、一般的には27dB〜30dB以上を目安とされている例が多いようです。
 まずは、運用におけるSNR値はいくつであるべきなのかを確認するか、自分で決めましょう。
 
2. 光送受信器の設定レベルを確認する。
 次に、伝送路とH/E内との境界線上にあるE/O・O/Eレベル設定を確認します。
 一般的には50dB〜60dBmVとなっているようですが、メーカーによって差があるかと思いますので、仕様書や納入時の設定値を見て値確する必要があります。
 
3. 光送受信器からCMTSの上りコネクタまでの配線のレベル減衰量を確認する。
 次に、光送受信器からCMTSまでの配線図を確認します。
 この配線図には、途中に使われている分配器や分岐器の位置、及び同軸ケーブルの長さなどが記載されている必要がありますので、もしそう言った情報が記入されていない場合には、同軸ケーブルを順繰りに辿って、確認しなければなりません。
 それらの情報が揃ったら、机上で減衰量を割り出します。
 分配器や分岐器での減衰量はメーカーや使用する周波数によって若干異なりますが、大まかには以下の通りです。
 2分波器:-4dB
 4分配器:-8dB
 6分配器:-12dB
 8分配器:-13dB
 1分岐器:-2dB
 2分岐器:-3dB
 4分岐器:-5dB
 
4. Signal Generator(SG)を使って実際のレベルを確認する。
 上記の値はあくまでも机上の計算となりますので、きちんと図面通りに配線されているのかを確認するため、各ノードごとにSGを使って上り信号を立ててその信号がCMTSの上りコネクタ直前までで、実際にどれくらい信号が減衰しているのかを確認します。
 途中にテストポートがあれば、そこにスペクトラムアナライザを入れて、SGからの信号レベルを確認しますが、もしテストポートがなければ、いったん同軸ケーブルをCMTSの上りコネクタから抜いて確認しなければなりません。
 したがって、ノードの株分け時や新規ノード設置時の配線時にしっかり信号レベルを計測しておくことをお勧めします。
 
ここまでの作業で、CMTSの上りコネクタに到達する信号レベルが割り出されますので、その数値をCMTSに設定します。
 
5. モデムの上り出力レベルを確認する。
 上記までの作業が完了し、CMTSの上りレベルが設定された状態において、伝送路上のモデムの上り出力レベルとSNR値を確認します。この数値はCMTS上では確認できませんので、各モデムのWeb GUIMRTG等によるデータで確認する必要があります。
 なお、モデムが出力できるレベルは、上りの変調方式によって異なりますので、その範囲内に収まっており、かつ、SNR値が一番最初に決めた運用方針と同じぐらいか、それよりも良い状態になっていれば、CMTSの設定値が正しいこととなり、そのまま運用に入ります。
 各変調方式ごとの上り出力レベル範囲はこちら(http://d.hatena.ne.jp/akrsakai/20060809)。